2008年4月29日

群発頭痛は血管性頭痛の一種で,詳しくは三叉神経自律神経性頭痛という分類の一型です。頻度は片頭痛の100分の1程度(慢性頭痛全体の0.1~0.4%)とされ,30歳前後(27~31歳)の男性に多く,男性が女性の4.5~6.7倍多く見られるとされます。毎回ほぼ必ず片側で,数年に1回から年数回まで頻度には個人差はありますが,周期性のある群発発作期があり,1回の発作期は大体2週間~3ヶ月が多いようですが,7日~1年と幅はあります。通常は間歇期(発作が起こらない期間)が1ヶ月以上ありますが,15%程度の人は間歇期が1ヶ月もない慢性群発頭痛となるようです。

1回の発作は大体片側ですが,中には片側が治まってから反対側がすぐ痛くなる発作期に入る人もいます。発作は大体1時間前後(15分~3時間)続き,性状は激しく突き刺さる,ナイフや針で何度も刺される,握りつぶされる,じくじくと絞られる,などと表現され,片頭痛のような拍動性であることはあまりないようです。また片頭痛のように動くと頭に響くことはあまりなく,むしろじっとしていられず,頭を壁にぶつけたり,歩き回ったりして何とか紛らわそうとする人が多いようです。吐き気はあまりないといわれていますが,吐き気のある人もいます。痛む部位も眼の奥のみならず,鼻や歯に響くこともあります。発作側の後頭部が痛くなることもあります。

群発頭痛の根本原因はまだ分かっていませんが,季節の変わり目に多く,また一日のうち発作の起きる時間が大体決まっている人が多く(特に夜の2時,4時,明け方などが多いことから目覚まし頭痛などとも言われます),人間の体内時計の日内リズムと関係しているといわれます。図は頭痛大学の間中信也先生が,群発頭痛の原因を分かりやすく図解したものを,許可を得て転載したものです。自律神経の中枢である視床下部に体内時計がありますが,そこから季節の変化に応じて規則的に異常な信号(トリガー)が発せられ,それが脳幹にある三叉神経(顔面や血管の周りに行く神経)を刺激し,その刺激が眼の奥にある内頚動脈や,痛みの神経が豊富な硬膜(脳や脊髄液を包む膜)に伝わり,独特の激しい痛みを生み出します。同時に脳幹で上唾液核という自律神経の中枢が刺激され,発作の時に涙が出たり鼻が詰まったりという自律神経症状が出ます。眼球結膜が充血し眼裂が細くなり瞳孔が小さくなるのも自律神経症状です。脳幹から後頭部にある神経にも刺激が伝わり,群発発作と同じ側の後頭部が苦しくなることも多いようです。

発作自体を止める方法で最も確実なのは,スマトリプタン(商品名イミグラン)の皮下注射です。100%純酸素吸入もかなり有効なようです。いずれも病院でないと受けられませんでしたが,最近,イミグランの自己注射が出来るようになりました。病院へわざわざ行かなくても自分で群発発作を止められるのは心強いことだと思います。また純酸素も,酸素ガス会社と酸素発生器をレンタル契約して家に置くことが出来ます。保険適用はないのですが,イミグラン点鼻薬もかなり有効性が高いといえます。トリプタン製剤の内服や消炎鎮痛剤はあまり効果はないようですが,インドメサシンはある程度有効性があるとされます。

群発期を短くするためには,保険適用外ですが以下のような薬が使われています。最も効果があるのが副腎皮質ステロイドで,副作用が出やすいのですが,かなりの割合で有効です。ある程度効果があるとされるのが,高血圧・不整脈治療薬のベラパミル(商品名ワソラン),抗てんかん薬のバルプロ酸(商品名デパケン,バレリンなど),カルバマゼピン(商品名テグレトール),ギャバペンチン(商品名ガバペン),トピラメート(商品名トピナ),抗うつ薬のアミトリプチリン(商品名トリプタノール)などがあります。また作用機序は不明ですが,漢方薬の呉茱萸湯は良く効くようです。

群発頭痛が起きている時期(群発期)には,出来るだけ早く体内時計の日内リズムを回復させるよう,睡眠起床の時間を規則正しくすることが必要です。血管性頭痛ですから,血管を拡張させるようなこと,例えば飲酒や長湯は群発発作を誘発します。タバコも良くありません。ヒスタミンも影響しますので,アレルギーの方は特に群発が起こりやすい時期には,早めに抗ヒスタミン剤を内服することも勧められます。また狭心症治療薬のニトログリセリンで誘発されることもあります。

国際頭痛学会の群発頭痛の診断基準を以下に示します。

A.B~Dを満たす発作が5回以上ある。
B.一側性の重度~極めて重度の頭痛が,眼窩部,眼窩上部,側頭部などに(未治療の場 合)15~180分間持続する。
C.頭痛と同側に少なくとも以下の1項目を伴う。
1.結膜充血または流涙(あるいはその両方)
2.鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
3.眼瞼浮腫
4.前頭部および顔面の発汗
5.縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
6.落ち着きがない,あるいは興奮した様子
D.発作頻度は2日に1回~1日に8回までである
E.その他の疾患によらない

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