2008年4月24日

○睡眠・夢と睡眠障害について
人間はおよそ人生の3分の1を眠って過ごすといわれます。大体の方にとっては睡眠は当たり前の出来事で,夢を見るのも当たり前のことでしょう。しかし現在,日本人の4人に1人が十分な睡眠による休養を取れていない状態と言われています。偶然にも慢性頭痛と同じような割合です。睡眠障害の一番の問題点は,本人もあまり睡眠の重要性に気付いておらず,睡眠障害があっても,単に日中眠気がさすだけとか,忙しくて疲れているだけ,或いは年令のせいで,などと自己流の解釈をしてそのままにしてしまう場合が圧倒的に多い,ということです。しかし最近では睡眠障害が社会や人間個人に及ぼす重要な影響について,健康医学のみならず経済や政治の種々の分野からも注目を浴びています。

○痛みと睡眠障害はどのように関係するか
人間は深い睡眠に入ると痛みを感じないように出来ています。しかし睡眠障害により,慢性の痛みや,気分障害などが起こってくることも知られています。痛みと睡眠障害を結びつけるものは,脳内のいろいろな神経伝達物質だったり,ホルモンの変化,体内時計や日内リズムの変化,以前の恐ろしい記憶だったりします。実際,痛みと睡眠障害は切っても切れない関係にあります。

○慢性痛と睡眠障害
多くの慢性痛が睡眠障害を伴ってきます。慢性痛の検査で睡眠脳波などに特有の異常が出ていることが知られています。慢性痛の人は寝ようにも十分眠られなくなっています。それが痛みの閾値(痛いと感じる刺激の強さ)を下げて,少しの刺激で痛みを感じる状態にしています。気分の障害も睡眠が十分とれないことと関係しますので,逆に睡眠を十分とれるようにすれば,痛みがかなり軽くなることが知られています。

○より良い睡眠を目指して:睡眠衛生指導
睡眠衛生指導とは,良い睡眠習慣を身に付けてもらうための指導法です。不眠症の治療や慢性痛の治療の一環として役立ちます。推奨される方法としては,起床時間を規則正しくする,床の中に長く居すぎない,シフト勤務者以外は午後3時以降の昼寝を避ける,夕方のタバコやカフェイン,アルコールの摂取は避ける,日中早い時間に規則的な運動を心がける,就寝前に心身のリラックスのための工夫をする,眠れなくても時計は見ない,寝る前に空腹であればスナックや温めのホットミルクなどは可,など。寝る前のリラックス法としては,呼吸調整,自律訓練法,漸進的筋弛緩法,アロマテラピーその他。厚生労働省研究班は2005年に睡眠障害対処12の指針(表)を発表しています。

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表.睡眠障害対処12の指針(厚生労働省研究班,2005)
1.睡眠時間は人それぞれ,日中の眠気で困らなければ十分
2.刺激物を避け,眠る前には自分なりのリラックス法
3.眠たくなってから床に就く,就床時間にこだわりすぎない
4.同じ時刻に毎日起床
5.光の利用で良い睡眠
6.規則正しい三度の食事,規則的な運動習慣
7.昼寝をするなら15時前の20~30分
8.眠りが浅いときは,むしろ積極的に遅寝・早起きに
9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
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○睡眠薬について
睡眠薬はバルビタール系,非バルビタール系,ベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系の4種類がありますが,現在多く使用されているのはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。特に後者は依存性が少なく,自然の睡眠パターンを崩しづらいといわれているため,使用しやすいといえます。その他,抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬),精神安定薬,抗うつ薬などを睡眠薬の代わりに用いることも出来ます。また睡眠薬に対して恐ろしいという先入観念をもつ人も多く,睡眠薬が嫌な場合は漢方薬で代用することもできます。睡眠薬は専門家と相談しながら使えば決して恐ろしくはなく,むしろ生活の質を改善させます。

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