学会イベント 第6回北海道頭痛勉強会後記 更新 : 2004年5月23日
去る平成16年5月17日(月曜日)に,札幌パークホテルにおきまして,第6回目の北海道頭痛勉強会がファイザーの協賛のもと開かれました。今回の特別講演の題名が「女性と片頭痛」であり,会場を埋め尽くした160人以上の聴衆の3分の2以上が女性でした。この日ばかりは広いパークホールが狭く感じられたほどでした。

まず18:00過ぎから,今回の共催メーカーであるファイザー社の学術担当者から,トリプタン系片頭痛治療薬レルパックスに関する説明があり,多くの面で他のトリプタンに比べても優れた面をもっていることを強調されました。特に私も使ってみて実感していますが,副作用は他のトリプタンに比べ少ないようです。今後,他のトリプタンとの住み分けや,トリプタン誘発性慢性片頭痛などの問題に注意して使用しなければならないと思います。

引き続き18:20頃から一般演題が始まりました。座長は頭痛勉強会の幹事である田中千春先生が勤められました。実は今回に限り,発表者のお二人の先生方とも,たまたま頭痛勉強会の幹事ですが,別に演題の集まりが悪かったからこうなった訳ではなく,今回に限り,おもしろい演題がお二人により提供されたので,一般演題の公募は行なわなかったのです。
はじめの演題は幹事の木村眞司先生により発表された「難治性混合性頭痛がインドメタシンに反応した一例」です。実はこの症例は第4回の勉強会で木村先生が,こういう難治例を抱えていて,誰かいい知恵はありませんか,という形で中間報告されたものです。その後,木村先生のご努力の賜物で,持続性片側性頭痛(hemicrania continua)に似ているということが分かり,インドメタシンという,古くから知られている消炎鎮痛剤が著効したと報告されました。薬はなんでも新しければよいというわけでもないようです。なぜインドメタシンが効くのか,というフロアの質問には,インドメタシンにはトリプタンと同じインドール環が含まれることが,何らかの効果につながるのではないかと答えられていました。

続いて「頭痛で発症したリウマチ性多発筋痛症の一例」という演題名で,藤木直人先生による発表がありました。68歳の女性で,頭痛で発症し,血沈が亢進しておりステロイドが有効であった症例です。リウマチ性筋痛症は炎症性とは考えられず,この頭痛は分類不能と思われます。全身の多発筋痛があればこの疾患が疑われる訳ですが,頭痛で発症する事もあることは知っておいて損はないと思います。質疑応答では札幌医大神経内科の松本教授が,RIシンチによる本疾患の診断に言及され,アップテイク増大があれば診断がより確実になることを示唆されておりました。

19:00頃より北海道医療大学教授の田代邦雄先生を座長として,特別講演が始まりました。演者は日本の頭痛医療の指導者の一人である,北里大学神経内科講師の五十嵐久佳先生です。女性医師という立場から,女性に多い片頭痛の話題,特に月経関連頭痛の話を詳しく聞かせていただきました。五十嵐先生といえば,有名な「頭痛日記」の制作者であり,今回のご講演でも改訂版頭痛日記について,症例を交えてお話しされました。また昨年発表された国際頭痛学会の頭痛分類改訂版(ICHD-Ⅱ)についてもお話しされ,頭痛の予防薬,治療薬についても妊娠との関連から詳しく話されました。ちなみに五十嵐先生は最近,女性ならではの書籍といえる「アスピリンカフェのレシピ」という,頭痛予防になる食事の作り方をまとめた,豊富な写真入りのきれいな本を出版されました。ベストセラー間違いなしと思います。質疑応答では薬剤誘発性頭痛と慢性片頭痛の関係につき質問が出て,アメリカとヨーロッパで考えが違う事などを話されました。

20:00を少し過ぎた頃,講演が終了し,今回の勉強会の締めくくりの言葉を,当会顧問である札幌医大学部長の並木昭義先生から頂いて会を終了いたしました。
次回は本年10~11月頃に,グラクソスミスクライン社の共催で開催する予定です。今回のように,皆様に興味を持っていただけるような内容で行いたいと思いますので宜しくお願いいたします。

尚,会に先立ちまして幹事会が開かれ,国内4番目となるトリプタン製剤「マクサルト」の販売元のエーザイ製薬にも,当会の共催メーカーに加わっていただく事が全員一致で決まりましたことをご報告いたします。

文責 北見公一
第6回北海道頭痛勉強会プログラム
日時: 平成16年5月17日(月) 18:00~20:00
場所: 札幌パークホテル パークホールAB
札幌市中央区南10条西3丁目 ℡011-511-3131
【一般演題】 座長 中村記念病院 神経内科部長  田中千春 先生
講演1 「難治性混合性頭痛がインドメタシンに反応した一例」
札幌医科大学医学部 地域医療総合医学講座助手 木村眞司 先生
講演2 「頭痛で発症したリウマチ性多発筋痛症の一例」
独立行政法人国立病院機構札幌南病院 神経内科 医長 藤木直人 先生
【特別講演】
座長  北海道医療大学 心理科学部 教授 田代邦雄 先生
演題 「女性と片頭痛」
演者  北里大学病院内科(神経内科) 講師 五十嵐久佳 先生

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