学会イベント 第7回北海道頭痛勉強会後記 更新 : 2004年11月7日
去る11月4日(木),札幌パークホテルにおきまして,第7回北海道頭痛勉強会が開催されました。幸いそれほど寒くもなく,会場には約100名ほどの医療関係者のご参加をいただきました。
まず定刻どおり18:00から,今回の協賛メーカーである,グラクソスミスクライン社より,製品のイミグラン点鼻薬のご説明が20分ほど行なわれました。点鼻薬は今のところグラクソ社製のものしかないため,多くの重症片頭痛や群発頭痛の患者さんに欠かすことのできないものとなっています。効果に関しても,イミグラン注射薬ほどではありませんが,経口薬に比べて,かなり速効性で副作用もそれほど問題ないという報告がありました。

続いて18:20頃より一般演題の発表が,座長の札医大総合診療部の木村眞司先生の司会により行なわれました。
一題目は北見クリニックの北見の発表による,種々の心理背景をもった非定型顔面痛の症例報告でした。実際に片頭痛や群発頭痛のような身体的頭痛を訴えても,その背景に,心理社会的な問題が潜んでいることがあると教えられた症例でした。質疑応答は,やはりこの症例では頭痛以外に他の訴えはなかったか,というものや,この症例から学ぶものはなにか,といった質問があり,答えさせていただきました。
二題目は中村記念病院神経内科の阿部先生による,舌咽神経痛の一症例の発表でした。舌咽神経痛は三叉神経痛の100分の1という,非常にまれな疾患であり,臨床症状や,診断の注意点,特に特殊な方法でMRIにより圧迫血管を確認することが大事だということなどが話されました。質疑応答は,舌咽神経痛は動脈瘤などの器質的疾患が多く見られるが偶然なのだろうか,という質問や,上喉頭神経痛と舌咽神経痛が似ているので鑑別が必要であるという意見などが出ていました。また咽頭への高濃度キシロカインゼリーやスプレーの投与が診断に有効だろうという意見もありました。非常に珍しい疾患ではありますが,きちんと診断しさえすれば,治療は神経血管減圧術が非常に有効であることを,演者は強調されておりました。

18:50頃より,本日のメインエベンターである,東邦大学心療内科講師の端詰勝敬先生が登壇し,札医大麻酔科教授の並木昭義先生の座長のもと,「心身症としての慢性頭痛」という演題名で,講演を始められました。高校時代に札幌へ修学旅行に来られて,同級生だった奥様とデートをされた思い出話から始められ,さすがに心療内科医と思わせる,心理背景の解説や,心療内科的治療などについて詳しく話されました。以下にかいつまんで内容を報告します。ストレスと片頭痛に関しては今までもよく知られていましたが,端詰先生が調べたところ,2日前の日常的ストレスが片頭痛発作に関連していることがわかり,よく「ストレスが片付いてほっとすると片頭痛が起きる」ということを裏付けるデータだと思われるとのことです。また緊張型頭痛と失感情症の話や,頭痛と心因ストレスとの関連を,症例を交えて話されました。特に,心身症として慢性頭痛を捉えるには,アメリカ精神医学会の疾病分類である,DSMの多軸診断を取り入れる必要があることを強調されました。また,通常のうつ,不安,神経症という心理背景をもつ慢性頭痛にまじって最近は人格障害的心理背景を持つ人が少なくないということも言われました。あとのトピックスとしては,片頭痛にはうつの合併や,パニック障害の合併が多いということから,これらの疾患に共通する何かがありそうだが,単順にセロトニンやノルアドレナリンなどの問題だけでは解決しないかもしれない,という意見を言われていました。治療に関しては,ストレス対策は押し付けず,自分からいろいろ選ばせると言う事や,治療薬には抗うつ薬,向精神薬などをもっと使用してもよいと思うと話されていました。ただし,その使用にあたっては,患者さんに隠さず,どんな目的でこのような薬を使うのかを,充分理解していただいた上で使用するということでした。端詰先生は内科的な心療内科医であると自分で言われていましたが,やはり慢性頭痛を診断治療するのは,精神心理的要素が欠かせない事を充分伝えてくれました。そして,国際頭痛学会(IHS)の頭痛分類の中で,心身医学的に頭痛を捉えた部分がほとんどなく,僅かに精神疾患に伴う頭痛として,妄想などの頭痛を取り上げているのみである点を指摘し,IHS分類の問題点だろうと指摘されました。
講演に対する質疑応答はある程度,講演内容に沿ったもので,端詰先生は詳しく答えられていました。

定刻よりやや遅れて20:10頃,頭痛勉強会の顧問である北海道大学神経内科教授の佐々木秀直先生より,今回の頭痛勉強会の内容に付き総括があり,次回もおもしろい会にしてほしいと期待が述べられ,今回の協賛メーカーであるグラクソスミスクライン社代表よりのお礼の言葉をもって会を終了いたしました。

次回,第8回北海道頭痛勉強会は,平成17年春にアストラゼネカ社の協賛で行なう予定でおります。また嗜好を凝らした内容を考えておりますので,皆様のご参加を宜しくおねがいいたします。
 
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