学会イベント 第8回北海道頭痛勉強会後記 更新 : 2005年6月24日
去る平成17年6月16日木曜日の夕方6時から,第8回の北海道頭痛勉強会が札幌グランドホテルで開かれました。参加人数は共催のアストラゼネカ社の発表によりますと,ちょうど150名ということでした。会に先立ちまして,アストラゼネカよりゾーミッグRM錠の最近の話題と,片頭痛診断ツールであるMigraine-Questについての説明がありました。Migraine-Questは2項目の簡単な質問で片頭痛の可能性をスクリーニングし,可能性があれば裏のより詳しい質問へ移るという,なかなか合理的な作りになっており,片頭痛の診断に不慣れな先生には使いやすいツールといえます。詳しくはアストラゼネカ社に問い合わせて下さい。
午後6時20分ころより,頭痛勉強会が始まりました。まず江別市立病院神経内科の柳原哲郎先生の座長で,一般演題が開始されました。演題Ⅰは北見による発表で「三叉神経自律神経性頭痛を疑う一難治例」の発表でした。8年前から両側後頭部が日に4~15回も拍動性に強く痛み,数時間何も出来なくなる,という30才代男性の症例で,片側性でもなく目の奥というわけでもないためTACSの1型とはいえないが,発作の起き方が似ているということと,ドパミンD2拮抗剤であるチアプリドが発作予防に有効であった可能性があるという発表でした。演題Ⅱは中村記念病院神経内科の仁平敦子先生による「睡眠時頭痛の1例」ということで,夜間睡眠時に頭痛発作を起こす症例の報告と,今までの睡眠時頭痛の報告のレビューが行なわれました。緊張型とも片頭痛ともつかぬ特長的な発作形をもち,予防薬がいくつか有効である由ご発表いただきました。
午後6時50分頃より,当会顧問である北海道大学神経内科の佐々木秀直教授の座長で,本日のメインイベントである日本医大脳神経外科助教授 喜多村孝幸先生による「脳脊髄液減少症による頭痛について」の特別講演が行なわれました。まず国際頭痛分類第Ⅱ版の中の「7.2低髄液圧による頭痛」を解説され,その中の7.2.3特発性低髄液圧性頭痛にこの脳脊髄液減少症が含まれている,ということを話されました。マスコミでも最近採り上げられていますが,むち打ちなどで症状が長期化した方の中に,この病態が含まれていて,確かに見逃してはいけない病態であると言う事を言われていましたが,喜多村先生はさらに詳しく,ご自分の施設へ脳脊髄液減少症ではないかとかかられた患者さん220名の診断治療結果を分析され,最終的にこの病態と診断されたのは約1割強であったと述べられました。すなわち後で示すブラッドパッチという手法で,原因不明とされたむち打ち症の患者さんの1割が治ったということになると,これを多いととるか少ないととるかは別にして,やはり無視できない一つの疾患単位と考えなければならないと話されていました。診断で必要な事は,症状のスクリーニングで,この病態に合った起立性頭痛と軽度の脱水状態で症状が悪化することなどを目安にし,頭部造影MRIを行なってもう一段階スクリーニングをする事だそうです。そしてMRIで所見が出たり,症状から強く疑う場合は,脳脊髄液のもれを検査するRI脳脊髄シンチを行ない,直接の漏出像や膀胱へのRI早期集積像が得られた場合,漏出があると判断し,漏出部位がわかる場合はその近傍から,漏出部位が分からない場合は,まず腰椎から自家血15-30mlを造影剤とともに注入する「ブラッドパッチ(自家血パッチ)」を行ない,不十分な場合は上位胸椎から再度15ml程度のブラッドパッチを追加するという方法で治療を行なう,というお話でした。非常に論旨明快で分かりやすく,会場にいた参加者全員が,このような病態を認識したものと思われます。活発な質疑応答のあと,当会の顧問である札幌医大神経内科松本博之教授の閉めの言葉があり,片頭痛以外の頭痛がはじめてメインテーマになった本勉強会をご評価いただいた内容でありました。本勉強会では参加を130名程度と考えていましたので,共催のアストラゼネカの係りの方も,用意した弁当が足りるかどうかはらはらしたと,後でお聞きしたほど多くの方にご参集いただき,成功裏に終了いたしました。第9回は今年秋に予定しております。引き続きご参加のほど宜しくお願いたします。
文責 北見
 
戻る
 
 
 
ホームページ作り方